アミ 小さな宇宙人
この本は、熱海の坂爪圭吾さんの家にある「わたり文庫」の本棚から持ち帰った本。
わたり文庫の本棚は、台所にある古い水屋を本棚として使われていた。なんとも言えない優しい雰囲気を醸し出していたその水屋の中に、全国から届いたのであろう本が綺麗に丁寧に整理されていた。
その中にこの本があった。なぜか惹かれるその一冊の本を手に取ってみたら、偶然横にいたかおりさんに良い本だと薦められた。その瞬間にこの本を持ち帰ろうとそう思った。
家に帰って読み始めると素晴らしい本だった。
出逢うべくして出逢った、そんなことを感じた一冊になった。
本の冒頭にこんなことが書かれている。
注意(おとなのみにむけた)読み続けないように!きっと面白くないでしょう。ここに書いてあるのは、すばらしいことばかりだから。
そう、1年前の私がこの本に出逢ったとしても、この「素晴らしいこと」ばかりの本を見て面白くないと判断したに違いない。恐らく大した注意を払うことなく過ぎ去った出逢いになったのだろう。
当時の自分には、この本の素晴らしさを理解できなかっただろうと思う。本当に必要なものや人に対して自分がきちんと向き合わなかったことで本当の出会いとならずに過ぎ去ってしまう、そういうすれ違いが世の中にたくさんあるように、私の心に留まることなく過ぎ去ってしまった可能性が高かっただろうと思った。
今このタイミングでこの本に出会うために、熱海に行くことになったのだろうとさえ思った。
この本は、宇宙の基本法について語られた本だ。
宇宙の基本法が何かを知らない人はこの本を読んでみてほしい。
ある世界の科学の水準が、愛の水準をはるかにうわまわってしまったばあい、その世界は自滅してしまうんだよ・・・・・
今の人類の技術レベルでは、どれほどの叡智を結集しても他の恒星系に人類を到達させることは夢物語だ。その人類でさえ、自分たちを滅ぼすのに十分な、十分すぎる兵器を蓄えている。争いをなくさなければ、科学技術の発達と合わせて、さらに強力な兵器が発明されることになるだろう。このまま争いを続けていれば、地球環境を破壊し続けていれば、他の恒星系に到達できるほどの優れた技術を開発することなく自分たちの身を滅ぼしてしまう可能性の方が遥かに高いことは、考えてみれば子供でもわかる議論だ。
先日、スターウォーズの最新シリーズを遅ればせならが見にいったが、星を破壊するほどの威力を持った兵器が使われるシーンがある。あんなものを開発する技術がある種族が、争いを放棄しないままに力を持ってしまったら、どう考えてもその種族は滅んでしまう。他人へ向ける暴力は、結局は自分自身に返ってくるものなのだから。
ある人たちには、もっとも単純なことがいちばん理解しがたい・・・・・愛とはつよさ、振動、エネルギーであり、その効果は我々の機械ではかることができる。もしある世界の愛の水準が低けりゃ、それだけの世界は、多くの人が不幸で、憎しみや暴力や分裂、戦争などが多く、とても自滅の可能性の高い、きわめて危険な状態にあるんだよ・・・・・
文明の成長は、物質的な成長のことではなく、精神的な成長である。高度に発達した文明社会では、愛の水準が科学の水準を遥かに上まわっており、そんな世界では、全ての人が愛の重要性に気付いていて争いなど起こらないのだと思う。ハリウッドに良くある映画のように、高度な技術を持った異星人が攻めてくるなどと言うことはあり得ないのだ。まだまだ科学の水準の方が高く、争いを放棄できていない人類が考えるから、そのレベルの人類が考えるから、宇宙規模でのバトルや、宇宙人が地球に攻めてきて人類を滅ぼしてしまうといったような発想になるのだろう。
あとがきにさくらももこさんが書いている。
私は、良い宇宙人が出てくる本を探していた。何か企んでいるようなイヤな宇宙人ではなく、もっと地球人に良い影響を与えてくれるような、精神レベルの高い宇宙人が出てくるような本を読みたいと思っていたのだ。
人類の歴史は戦争の歴史だ。科学技術の発展に伴い、地球環境を破壊し続け、多くの生命種を絶滅に追い込んできた。決してそれを非難するものではなく、科学技術の発達は人類にとって必要なものだ。でも、それに合わせて、いや、それを凌駕するレベルでの精神レベルの向上がこれらかの我々には必要になるのではないだろうか。
人類は自らを滅ぼしてしまう方向に進んでいるのか。
いや決してそうではないと思う。
自分の知る狭い世界であるが、若い人たちの精神レベルは明らかに向上しているとそう思う。我々の世代においても、精神レベルの向上が必要だと考える人が増えていると思う。世の中を見ると、争いも多く、悲惨な事件も多いが、人類の未来は、決して悲観的なものではなく、未来に大きな希望を抱くことができる、そういう方向に向かっているのではないかと思う。
でも、たいていのおとなにとって、おそろしいことのほうが、すばらしいことよりも、ずっと信じやすいことだから、ほんのひとにぎりのおとなしかぼくを理解しないだろう、とアミは言った。
私は、アミのことを理解する『ほんのひとにぎりのおとな』でありたいと強く思うし、私だけではなく、大人にだって、「素晴らしいこと」を信じる人が多くいるということも知っている。
誰もが心の中では、そうあることを願っているのではないかと思う。
この青く美しい、まるい地球の未来の後継者でありまた、兄弟間に争いのない新しい地球の建造者であるすべての国のさまざまな年齢の子どもたちに捧げる
私は、この本を新しい地球の建造者たり得る我が娘に渡した。
この本を読み終えたら、あなたの友達にあげるようにと一言を添えて。
すべて、愛に基づいていないものは、こわされて・・・・・時ともに忘れ去られ捨てられていく・・・・・愛に基づいている、すべてのもの・・・・・友情 や 夫婦家族 や 組合政府 や 国家個人のたましい 人類のたましいこれらは、みな、堅固で確実で、繁栄し、身を結びこわれることを、知らない・・・・・これが、わたしの掟だ。・・・・・これが、わたしの約束であり、わたしの法だ・・・・・
この本には、続編が2作ある。
それらも読んでみようと思う。