人形浄瑠璃の魅力 〜 日本の伝統芸能に触れる楽しさを感じよう

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人形浄瑠璃を見に行った。
 
1月に大阪の国立文楽劇場へ「初春文楽公演」を観に、2月に東京の国立劇場へ「2月東京公演」を観に行ってきた。
 
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演目は、大阪公演が
 
 

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東京公演が、
 
 
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であった。
 
東京公演の前には、文楽の講座にも参加し、「かしら」について色々と教えて貰った。「かしら」とは、人形の頭のことである。
 
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人形浄瑠璃の人形は頭が独立しており、そこに色々な仕掛けが施してある。どの人形でもついているのは、「うなずく」という動作だそうだ。人形のかしらの中は重さの調整も兼ねて空洞になっており、そこに仕掛けが施してある。仕掛けを引っ張る紐は、三味線の紐の使い古したものだそうだ。仕掛けに必要なバネは、鯨のひげが使われている。
 
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「かしら」によっては、眉が動いたり、目が動いたり、口が開いたりする。ガブと呼ばれるかしらのように、綺麗な女性が一瞬にして鬼の形相になる仕掛けが施されたりしているものもある。
 
<鬼の形相になった時のかしら>
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<こちらは元の顔、顔に仕掛けの線が入っているのがお分かりだろうか>
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かしらが面白いのは、役に応じてかしらが準備されているのではなく、役者と同じく、一つのかしらを色々な役で使うということだ。要は、かしらというのは一人の役者であり、演目によって様々な役を演じるのだ。
 
その都度、色を塗り替え、髪の毛をつける。髪結いの方が、その役に合った髪に縫い上げていく。武士であれば武士風に、町人であれば町人風にといった形だ。その頭に服を着せ、手足をつけると、役者となる人形が出来上がる。それを通常は3人の人形使いの方が操作することになる。
 
顔の色は公演のたびに上に塗っていく形になるので、だんだんかしらが大きくなってくるそうだ。髪も公演のたびに釘で打ち付けていくので、頭はグギの穴でボロボロになっていく。それを修復しつつ使い、長いものでは150年も使っているというから驚きだ。
 
<手間から二つ目、頭に釘の跡がいっぱいなのは分かるだろうか>
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<こんな仕掛けも>
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かしらは、大きな木を切り抜いて作っていく。バランスが崩れると綺麗な動作にならないとのことで、木目の方向なども綿密に注意して作っていくらしい。新しい演目のためのかしらや、修理中のかしらの替えのために、平均して年に2個ほど制作するとのことだ。
 
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人形浄瑠璃の公演を是非見て欲しいと思う。人形が動く様、まるで生きているように感じる。繊細な動きの中に物語としての感情を込め、強さを感じる動き、艶めかしさを感じる動き、憎らしさを感じる動き、可愛らしさや愛嬌を感じる動き、これが伝わって来るのが驚きだが、これは見ないと分からない。
 
人形は3名で操っており、一人は顔を出しているが、後の二人は黒子役で顔を黒い頭巾で覆っている。演目に気持ちが入って行くと人形しか見えなくなるのが不思議だ。
 
セリフは舞台袖に控えている太夫(たゆう)が三味線の音色に乗せて語る。一人何役もこなし、男性も女性も主役も敵役も全員のセリフを声色を変え語る。大夫も三味線もまさしく芸術の域に達しており、重要無形文化財保持所(人間国宝)に指定されている方が何人もいる世界である。
 
文楽、人形浄瑠璃というとなんとなく敷居が高いそんな気がするが、そんなことは全然なく、本当に純粋にエンターテインメントとして楽しめる。ストーリーは、江戸時代を価値観や時代を背景としたものであり、今の時代とのギャップを感じさせるものであるが、人情や善悪の基準などは、日本人であれば、なんとなく通ずるものがあると思う。
 
かしらの講義の中で教えてもらったが、顔の色でその人物がどういう人間なのかがわかるようになっている。基本的に顔の白い人は善人、顔が赤茶けた人は悪人だ。そういう分かりやすさもとても良い。
 
東京公演で見た「桜鍔恨鮫鞘(さくらつばうらみのさめざや)」では、金に目が眩んだ義理の母親が、忙しくて家に帰ってこない婿の縁を切り、お金を持っている新しい婿を迎え、元の婿との縁を切ろうとする話だが、最後の種明かしで、実はお金の工面に困っている婿のためを思って、そういう行動に出てたということがわかる。
 
その母親は、物語では悪役を演じているのに、実は白い顔をしている。これは、実は悪人ではなく、善人なんだってことを示しているとのことだ。そういう知識を得て観劇するとまた面白く感じる。
 
なかなか、人形浄瑠璃を見に行こうというのは考えないかもしれないが、そういう日本の文化に触れることで、自分のルーツを知る何かそういうきっかけになるのではないかと、そう思う。
 
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これから、西洋史観ではなく旧来の日本的な思想が重要視される、そういう時代が来るのではと思う。そんな時に、日本人たる我々が日本文化、日本の心を知らないようじゃ困るので、ぜひとも、文楽の公演に足を運んで欲しいと思う。そういう目的がなくとも、純粋に本当に面白いから、これを読んで興味を持ってもらえたら嬉しいなと思う。
 
 
最後に、イヤホンガイドがオススメ。
 
ナイスなタイミングで、適切な説明をしてもらえるので、大いに理解に役立つ。実際、太夫の台詞だけ聞いていても理解が難しく、セリフは字幕で表示されているが、それにプラスしてイヤホンガイドがあるととても理解の助けになることは間違いない。
 
観劇の際には、イヤホンガイドを借りることをお勧めします。
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