私が転職をしようと思って本格的に転職活動を始めたのは、確か去年の8月ごろだったと思う。転職のエージェントに登録したら、すぐにいくつか面接の申し出があり、面接を受けることになった。
転職しようと決意して活動をしているのにもかかわらず、実際に面接をして感じたことは、
「このまま採用されることになったら今の会社を辞めることになる」
という事実に不安を抱いている自分がいるということだった。
何を言ってるんだと思うかもしれないがこれが正直な気持ちだった。
そもそも当時の仕事内容や職場環境に対する不満が転職の理由ではなく、あまりに慣れて安定している当時の環境にどっぷりと浸かっている自分への危機感からの行動だったから、いざとなると今の安定を失うかもしれないという不安が出て来て怖くなってしまう。24年間安定を求めて働いてきたのだから仕方ないとは思うけど、未知のものに一歩踏み出すということに対してどれだけ恐怖を感じているのかと、自分のことながら驚いたのを覚えている。
実際はそう簡単に採用されることもなく、いくつも断られ、なんとか年が明けた1月から2月ごろに、今の会社から採用の連絡をもらった。採用すると言われた後もかなり迷った。まあ、迷ったというにはちょっと語弊があるかな。転職する決意は固まっていて、更に、その方がいいに決まっていると心は感じているのだけど、「収入も若干下がるから」とか、「今の同僚を裏切ることにならないか」とか、「今のプロジェクトを途中で離れるということ」とか、色々と理屈をつけては「転職しない方がいいんじゃないか」と囁くもう一人の自分がいて、ともすればそれに負けそうになる。転職した方が良いに決まっていると魂でそう感じているのに、頭がついてこない、そんな感じだったかなと思う。
転職したことについては、前にブログに書いたように( http://kenichi-galaxy.com/2016-10-11)、とてもいい経験が出来ていて、今となっては、その逡巡ってなんだったのだろうかと、ちょっと笑えてしまうのだが、その時は本当に怖かったのを覚えている。これも一歩踏み出せたから感じることで、そこで負けていたらこんなことは感じられなかったと思うし、本当に良い経験ができたなと思う。一歩踏み出す前にはそんなことを考えてしまうんだなと、この一歩踏み出すってことが本当に難しいんだなってことをすごく感じることができた。
先日、ハイエレメントという設備を整えた那須の研修設備のことを投稿したけど、そこに、同じ恐怖を疑似体験として味わえる『キャットウォーク』という設備がある(写真参照)。10数メートルの高さに設置された丸太の棒を命綱一本つけて渡る、それだけのものだが、前に一歩踏み出すことの恐怖と不安を味わえる。
向こうまで丸太を渡る、そう決意して、スタートラインに立つのだけど、そこに立つと本当に恐怖を感じるし、こんなの渡れるはずがないぐらいの気持ちになる。そして、一番難しいのが最初の一歩踏み出すこと。安定した柱から手を離して一歩踏み出すことが一番恐怖だということがわかる。踏み出してしまえばなんとかなるというか行くしかなくなる。命綱をつけているから落ちても絶対死なないし、一体何が怖いのだろう、なぜ足が震えるのだろうと考えたらわからなくなる。人生も本当にそう。転職で怖かったのは一体なんだったのだろうか、自分は何を恐れていたのだろうかってそう思う。
何かをしたいと思ったらとにかく一歩踏み出してみる。ほんの少しで良いので違う環境に飛び込んでみる。普段見ないものを見てみる。普段触れないものに触れてみる。普段会わない人に会ってみる。そんなに大きなことではなくても、普段の習慣を当然だと思わずに、自分はこういう人だという型から抜け出して、やらなかったこと、やれないと思っていたこと、嫌っていることなんかも少しやってみると、元いた世界の狭さが分かってくる。いかに自分が縮こまっていたのかを感じることができる。そういうことで自分の価値観が広がるのだと思う。
不思議なもので、価値観が広がったら広がった分、自分にも他人にも優しくなれる。視野が広がり、どんどん新しいことが見えてきて、新たなことにチャレンジする勇気も、自分の好きなことをやる勇気も、目の前の嫌なことから逃げる勇気も与えてくれることになると思う。安定していても硬直したつまらない人生を送りたくないから、次の一報を踏み出す勇気を持つために、多くの人に触れ、どんどん新しいものに触れていければなと、そう思う。